顎顔面外傷のうちで、骨折で最も多いのは顎骨です。交通事故では非常によくおこります。骨折の治療には
大きく分けて外科的治療と非外科的治療(保存治療)があり、けがの状態などの条件によって選択されます。
あごに大きな外力が伝わった場合、骨折するのはその強打した部位
であることが大部分です。骨折の場所をレントゲンやCT画像でみると
黒いすじ(骨折線)が観察できます。ところが、ごの関節(顎関節)
付近は、直接打撲しなくても、おとがい(下あごの先端部分、前歯の下
あたり)付近の打撲で強い力が加わり骨折をおこします。
下あご(下顎骨)の骨折  骨の位置がずれている(矢印)
 顎骨が骨折すると、痛みや腫れが生じるのはもちろんですが、
以下のような特徴があります。
1)骨がずれるため上下の歯がきちんと咬みあわなくなる
2)顎関節付近の骨折では、あごの開閉(顎運動)に異常
  をきたす
 骨折の治療といえば一般的には整形外科ですが、これら
に対する治療を的確に行うためには咬み合わせ(咬合)とあご
の関節(顎関節)の機能についての高度な知識が要求されます。
この専門分野が歯科の一分野である口腔外科(こうくうげか)
です。最近では大多数の総合病院には口腔外科(または歯科
口腔外科)があります。
同じ部位のCT画像 骨折線がはっきりと認められる
 骨折の治療で一般的なのがいわゆる「ギブス」ですね。骨折で
ずれた骨を元に戻し、治癒するまで固定しておくのがギブスの
役割ですが、顎骨骨折でこれにあたるのが顎間固定(がくかん
こてい)です。正しく咬み合う状態で上下の歯をワイヤーで固定
します。
 この方法単独で骨折部位が治癒するのには約6週間かかりま
す。その間上下の歯は咬んだままで口を開けられないので、食事
は流動食に近いものになります。これは患者さんにとって非常に
大きい負担となっていました。
 しかし近年は生体になじみが良いチタン製や、自然に吸収して
後からの除去の必要のない高分子製のプレートとネジを使い、
手術により骨折部位を固定し顎間固定期間の大幅な短縮が可能
になってきています。
顎関節骨折(CT画像) 右側は正常だが左側は顎関節の元の部分 (顎関節頚部)で骨折している。

X線画像は長崎大学歯学部歯科放射線学講座 口腔・顎顔面画像診断ティーチングファイルより改変して引用 前に戻る  次に進む