ギリシア時代の初期に、哲学者、科学者として有名なアリストテレス(紀元前384年〜322年)は比較解剖学(異なる動物の間で比較する解剖学)でも成果をあげ、その中に歯に関する記述があります。彼が述べている、歯の種類と役割に関する記述は非常に正確なものです。しかし驚いたことに、彼は「男は女より歯の数が多い」などという誤った結論も述べており、それが18世紀まで信じられてきたのでした。
ラファエッロ・サンツィ作「アテネの学堂」部分。  
中央右がアリストテレス、左はプラトン


ヒポクラテス全集
大阪大学図書館所蔵
ギリシア・ローマ時代の医学の進歩に最も貢献した人物といえば、何といってもヒポクラテス(紀元前460年?〜 377年?)があげられます。彼の最も大事な業績は、それまで境界が曖昧だった医学と宗教を分離したことです。それまで病気を治療するのは僧侶などの聖職者でしたがこれ以後は医術を職業とする人々がでてきます。
 ヒポクラテスは「医学知識は観察に基づくべきで宗教的な説明をすべきでない」と説き、医学を自然科学の一分野として確立しました。また、医療に携わる者の心得を述べた「ヒポクラテスの誓い」は、医の倫理の聖典として現在でも尊重されています。 

彼の言葉の中には、歯科に関する多くの記述がありますが、あごの骨折時の歯牙の固定方法(金線や麻の繊維を用いる)などは、現在行われている方法と基本的には同じものです。中でも、「舌の縁の潰瘍がなかなか治らないとき、その側の歯に鋭くとがった部分があれば、鉄のやすりで平らにするのが良い」という記述は、現代歯科医学でも舌癌などの粘膜疾患か、刺激によってできた潰瘍(褥瘡製潰瘍、じょくそうせいかいよう)なのかの鑑別診断方法として重要なポイントです。つまり、尖った部分を削って1週間ほど経過観察し、治癒の傾向があれば口内炎、全くその傾向がなければその他の疾患(ガンなど)を疑います。
舌にできたこの潰瘍は?
単なる口内炎の場合が大部分ですが、
この例のようにまれには舌ガンの場合も
ありますので注意が必要です。

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