顎関節症のはなし」もこの号で最後になります。今月とりあげるのは、最終的にかみ合わせを変更することで
顎関節症をなおす場合、また頻度は少ないものの、症状が重度で外科的療法(手術)に踏み切らざるを得ない
場合、また顎関節や筋肉などの症状に心身医学的要因が加わって一層回復が困難になっている場合などに
ついてお話します。ひとくちに「顎関節症」といってもその範囲は非常に広いといえます。
 スプリント療法などで症状が改善した後、元のかみ合わせを変更して顎関節や筋肉などに負担がかからない
ようにする場合があります。装着されていた修復物(いわゆる差し歯、金冠など)を除去して再治療したり、
あるいは全く虫歯などがみられない歯に修復物を装着したりすることが多いため、顎関節症の症状が十分
改善し、安定してから取りかかります。最終的な治療になることが普通です。
 種々の治療法を試みても痛み、開口障害(口が開かない)などの症状が改善しない場合、手術療法が選択
される場合があります。これには通常の手術療法と、関節内視鏡による手術があります。
関節内視鏡による方法(関節鏡視下手術)
 膝(ひざ)などの他の関節や、腹部などでも内視鏡による治療が最近普及してきていますが、顎関節でも
内視鏡によって関節内部の手術が行われます。通常の手術に比較して皮膚を切開する大きさが非常に
少ない(1センチ以下の切開が1〜2ヶ所)のが利点ですが、全ての場合に可能な手術ではありません。

通常の外科的方法(関節開放手術)
耳たぶのすぐ前方を切開し、顎関節内部に直接到達して治療を行う方法です。
幅広い病状に対応できますが、顎関節の治療法としては「最後の手段」といえます
顎関節用に開発された内視鏡 ヒザなどの他の関節に用いるもの と比べると一般に小型です
内視鏡でみた顎関節内部 顎関節の内視鏡は世界にさきがけて 東京医科歯科大学第一口腔外科 で開発されました
   顎関節やそれに関係する筋肉などにさほど異常がみられないのに非常に重い症状をしめしたり、検査の
結果からは説明できないような多様な症状をもつ患者さんがおられます。このような場合、顎関節症の下に
神経症、うつ病などの疾患が隠れていることがあり、治療に心身医学的配慮が必要になります。
 歯科での通常の治療と平行して、心療内科などと緊密に連絡を取り合って治療をすすめる必要があり、
回復に時間を要することが多くなりがちです。

 「顎関節症」と一言でいってもとても多様な症状があり、それぞれに対応した治療法もかなりバラエティに
富んでいます。それらのほんの一部を取り上げて今月までお話ししてきました。顎関節症に悩む方々が
ご自分の状態を理解するために、いくらかでも参考になればと思います。
 もちろん取り上げた以外にも様々な診断法、治療法が行われていますので、担当医とよく相談しながら
治療を進めていくことが大切です。