歯の形や大きさは動物の種類によって様々でとても特徴的で、一本の歯だけで新種の動物と断定できる
場合もあるほどです。歯の表面をおおっているエナメル質は身体の中で最も硬いので、長い年月を経ても、
あるいは過酷な環境(高温高圧など)にさらされても変化せずに残りやすいのです。
 さらに現代人の場合は「歯の治療」を受けている場合が多く、歯の状態から個人を特定することさえも
それ程困難ではありません。これが最も威力を発揮した一例があの不幸な事故でした
 1985年8月12日、乗員乗客524人を乗せた羽田発大阪行き日本航空
123便は圧力隔壁破損から尾翼破損をおこし、群馬県多野郡上野村の
御巣鷹山付近の山中に墜落、死者520人、生存者わずかに4人という
単独機事故では航空史上最大の惨事をひきおこしました。
 つい先日、15年目の慰霊祭が行われたのは記憶に新しいところです。

 犠牲者の方々のご遺体は自衛隊員らの必死の努力で険しい山中から収容されましたが、
墜落の衝撃と火災による損傷が激しいため個人の特定ができず、身元確認の作業は困難
を極めました。この事態に大きな力を発揮したのが法医学の一分野「法歯学」だったの
です。
 歯科医療制度が整備されている国では、人々は歯の治療をうけている割合が高く、その記録は様々な形で
歯科医療機関に保管されています。これらの資料を利用して個人の特定を行うときに法歯学が使われます。 

カルテ…治療の時期と
内容が正確に記載され
ています。過去5年以内
に治療を受けていれば
必ず保存されています。
X線写真・・・
治療経過を追うのに
とても有効なレントゲン。
かなり以前のものでも
保存している歯科医
が多いです。
研究用模型…歯型。
事故機に乗り合わせ亡くなられた歌手の坂本九さんも主治医がこれを保管していたため役立ちました。
口腔内写真
最近はお口の中の写真を
撮影する歯科医が増えて
います。詳細な所見が得ら
れます。

 この事故の時には群馬県の警察歯科医の奮闘に加え、資料を提供した全国の歯科医の協力により
身元確認率は実に99.6%(犠牲者数520人中、518人まで確認)となりました。
 他の地域でも歯科医師会と警察の協力体制が作られています。もちろん出動がないことが一番なの
ですが、いざという時の備えはできているのです。

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