「ところで歯ってなんだ?」
 こんなことを急にきかれても皆さん困ってしまうでしょうが、歯の成り立ちを考えることでその 大事な働きが見えてきます。今月から順を追ってみていきましょう。
 歯は動物のなかで最も高等な脊椎(せきつい)動物、つまり魚類、
両生類、は虫類、鳥類、そしてほ乳類の全てににみられる器官です。
「ちょっと待った、カエル(両生類)やカメ(は虫類) に歯なんかないよ。鳥は?」
 そうおっしゃる方もいるでしょう。その通りです。ほ乳類でも ヒゲクジラの仲間、オオアリクイ、センザンコウなども歯を持って いません。しかし、それらの生物の祖先を化石で辿っていくといず れも歯を持っていたことが知られており、進化の過程で歯を失った ことがわかっています。最初の鳥類、始祖鳥も歯を持っていました。  また、カタツムリの歯(歯舌器)やウニの歯は酸化鉄や炭酸カルシ ウムからできており、りん酸カルシウム(アパタイト)が主成分であ る脊椎動物の歯とは異なるものです
始祖鳥の頭蓋骨標本(レプリカ) 上下のあごに円すい形の 同じ形の歯が生えている (ご提供始祖鳥生息地
 は虫類以下の脊椎動物の歯は同じ形をした歯が並んでいます。このような歯は食物を捕らえる
ことだけに使われ、食物は「まる飲み」状態で摂取されます。ワニやサメなどが判りやすいですね。
 ほ乳類では、歯はその動物の食物に適した形に進化しており、また前歯と奥歯でも役割の違い
から形が異なっています。肉食獣では肉を切り裂くのに適した形に、草食獣では草を効率よくすり
つぶせる形になっています。ヒトやサルなどは雑食性なのでその中間です。

    

  


トラの歯 
全ての歯は先が尖っており、食物である他の動物を捕らえ、肉を切り裂くのに適した形をしている。特に犬歯の発達が著しい。 

チンパンジーの歯  草も肉も食べるため、肉食と草食 の中間の形。基本的にはヒトと同 じだが野生動物だけあって犬歯は 発達している。歯は身を守る武器 としても使われるため。

シマウマの歯 
草食性のシマウマは前歯で草 をちぎり、奥歯で細かくすり つぶすために適した形の歯を 持っている。犬歯は退化して 小さくなっている。

(これらの頭蓋骨標本は哺乳類頭蓋の画像データベースより引用しました)

 同じ歯といっても色々あるのがおわかり頂けたと思います。でも、「食物を食べる」だけが歯の
役割ではありません。他にもとても大事な役割を担っています。次回はそれについてお話し
しようと思います。
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